冬に多い心臓病に備えて夏のうちに心臓の検査をしておきましょう。
動物病院で診察する機会が多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症です。
高齢犬に多く、7歳を越える頃から発症率は上がってきます。
キャバリア、マルチーズ、シーズーなどはかかりやすい犬種ですので注意が必要です。
まず僧帽弁閉鎖不全症とはどんな病気なのでしょう?
心臓は4つの部屋に分かれています。

肺から左心房に入った血液は僧帽弁を通過し左心室に入ります。
左心室から血液は全身へ送り出されます。

加齢や細菌感染によって僧帽弁が変形してしまうと、反転するようになってしまいます。
(細菌感染は歯周病とも関連があるといわれています)

僧帽弁の反転が起こると、血液の逆流が起こるようになります。
肺からの血液の流入と左心室からの血液の逆流により、左心房には血液量の増加が起こり、
左心房の拡大が起こります。
左心房の拡大が起こる頃から心臓の負担は増加し、疲れやすい、運動を嫌う・・・などの症状が少しずつ出始めますが
年を取ったから?と見過ごされてしまうケースも少なくありません。

さらに負荷がかかると、左心房は血液を十分に受け取ることが難しくなり、
肺に血液がたまるようになります。これが肺うっ血(肺水腫)といいます。
この頃になると、症状は明らかで、息苦しい、咳が出る
・・・などの症状が現れます。
急に悪化する場合もあり、激しい呼吸困難や血混じりの泡を吐くなど致命的なケースもあります。
症状が明らかになってくる頃には、心臓の状態はかなり悪くなっているので
そのようになってしまう前に心臓の状態を知っておくことは非常に重要と考えています。
早い段階で病気が発見された場合、食事療法、内科療法、サプリメントなどにより
症状の進行を遅らせることができます。
また、早い段階から治療をしているワンちゃんの方が、
非常に危険な肺うっ血(肺水腫)を起してしまった場合の回復率が高く思われます。
早い段階で心臓をケアすることで、心臓の余力を残すことができるから?と考えています。
なかなか目に見えない病気ですので、定期的な聴診・画像診断が重要になります。
画像診断検査としては、当院では主に胸部X線検査と胸部エコー検査を行います。
胸部X線検査では心臓の大きさや肺の状態の確認ができます。

上の写真は正常な胸部のX線写真です。
下の写真は僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんのX線写真です。

左心房が高度に拡大し、拡大した心臓に押されて、
その上を通っている気管が上に押し上げられてしまっています。
このワンちゃんは、ちょっと興奮すると咳が出てしまい、なかなか止まりませんでした。
心臓エコー検査では心臓全体や弁の形態や動き、血液の逆流の有無、僧帽弁閉鎖不全症の重症度などをしらべることができます。
下の写真は僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんのエコー画像です。

左側は弁が開いているとき、右側は弁が閉じているときの写真になりますが
弁が閉じるときに弁が左心房側に反転してしまい、隙間ができています。
この隙間から血液が逆流してしまいます。
これらの画像診断検査は非侵襲性の検査で、痛くない検査です。
早期発見はもちろん、病気の経過を知ることでより早くに予防のケアがご提案できますので
健康なときからぜひ受けて頂きたい検査です。
そこで・・・
来月は心臓健診キャンペーンとして
胸部X線検査・胸部エコー検査をそれぞれ500円ずつ割引いたします。
胸部X線検査:4000円 → 3500円
胸部エコー検査:4000円 → 3500円
心臓病を患っていないワンちゃんも患っているワンちゃんも
この機会に見えない心臓の様子をみてみませんか?